概要
バックグラウンド
電子タバコ(EC) は、リキッドを加熱することでエアロゾルを生成する手持ち式電子ベープ デバイスです。喫煙者の中には、喫煙をやめたり減らしたりするために EC を使用する人もいますが、一部の組織、擁護団体、政策立案者は、有効性と安全性の証拠が不足していることを理由に、これを推奨していません。喫煙者、医療提供者、規制当局は、EC が人々の禁煙に役立つかどうか、またこの目的で使用しても安全かどうかを知りたいと考えています。これは、生きた系統的レビューの一環として実施されたレビューの更新です。
目的
タバコを吸う人が長期の禁煙を達成できるように電子タバコ（EC）を使用することの有効性、耐容性、安全性を調査する。
検索方法
私たちは、2022年7月1日までのコクランタバコ依存症グループの専門登録簿、コクラン中央対照試験登録簿（CENTRAL）、MEDLINE、Embase、およびPsycINFOを検索し、参考文献を確認して研究著者に連絡しました。
選定基準
ランダム化比較試験（RCT）と、喫煙者をECまたは対照状態にランダム化するランダム化クロスオーバー試験を含めました。すべての参加者が EC 介入を受けた非対照介入研究も含めました。研究では、6か月以上の禁煙、または1週間以上の安全性マーカーのデータ、またはその両方を報告する必要がありました。
データの収集と分析
スクリーニングとデータ抽出には標準的なコクラン法に従いました。私たちの主要評価項目は、少なくとも6か月の追跡調査後の禁煙、有害事象（AE）、および重篤な有害事象（SAE）でした。副次アウトカムには、無作為化またはEC使用開始後6か月以上の時点でまだ研究製品（ECまたは薬物療法）を使用している人の割合、一酸化炭素（CO）、血圧（BP）、心拍数、動脈血酸素飽和度、肺の変化が含まれた。機能、および発がん性物質または有毒物質、またはその両方のレベル。固定効果の Mantel-Haenszel モデルを使用して、二分法結果に対する 95% 信頼区間 (CI) でリスク比 (RR) を計算しました。継続的な結果については、平均差を計算しました。必要に応じて、データをメタ分析にプールしました。
主な成果
22,052 人の参加者を代表する 78 件の完了した研究が含まれ、そのうち 40 件は RCT でした。含まれている 78 件の研究のうち 17 件は、このレビュー更新に初めて加わったものでした。対象となった研究のうち、10件（主な比較に寄与する1件を除くすべて）は全体的にバイアスのリスクが低いと評価し、50件は全体的にリスクが高い（すべての非無作為化研究を含む）、残りはリスクが不明瞭であると評価した。
ニコチン補充療法（NRT）に無作為に割り付けられた人々よりも、ニコチンECに無作為に割り付けられた人々の方が禁煙率が高いという高い確実性があった（RR 1.63、95% CI 1.30～2.04; I2 = 10%; 6件の研究、2,378人の参加者）。絶対的に言えば、これは 100 人当たりさらに 4 人の禁煙者が増えることになる可能性があります (95% CI 2 ～ 6)。AE の発生率が群間で同様であるという中程度の確実性の証拠（不正確さにより制限される）があった（RR 1.02、95% CI 0.88 ～ 1.19; I2 = 0%; 4 研究、1702 人の参加者）。SAEは稀であったが、非常に深刻な不正確さのため、発生率が群間で異なるかどうかを判断するには十分な証拠がなかった（RR 1.12、95% CI 0.82～1.52; I2 = 34%; 5件の研究、参加者2411人）。
不正確さによって限定されるが、ニコチン非ニコチンECに無作為に割り付けられた人々の方が禁煙率が高かったという中程度の確実性の証拠があった（RR 1.94、95% CI 1.21～3.13; I2 = 0%; 5件の研究、1447人の参加者） 。絶対的に言えば、これにより 100 人あたりさらに 7 人が辞めることになる可能性があります (95% CI 2 ～ 16)。これらのグループ間でAEの発生率に差がないという中程度の確実性の証拠があった（RR 1.01、95% CI 0.91～1.11; I2 = 0%; 5件の研究、1,840人の参加者）。非常に深刻な不正確さのため、SAEの発生率がグループ間で異なるかどうかを判断するには証拠が不十分であった（RR 1.00、95% CI 0.56～1.79; I2 = 0%; 8件の研究、1272人の参加者）。
行動サポートのみ/サポートなしと比較して、ニコチンECに無作為化された参加者の禁煙率は高かった(RR 2.66、95% CI 1.52～4.65; I2 = 0%; 7件の研究、3126人の参加者)。絶対的に言えば、これは 100 人当たりさらに 2 人の禁煙者がいることを表します (95% CI 1 ～ 3)。ただし、不正確さとバイアスのリスクの問題により、この発見の確実性は非常に低いものでした。（非重篤な）AE は、ニコチン EC にランダム化された人々でより一般的であるという証拠がいくつかあり（RR 1.22、95% CI 1.12 ～ 1.32、I2 = 41%、確実性が低い、4 研究、765 人の参加者）、やはり不十分でした。 SAE の発生率が群間で異なるかどうかを決定する証拠 (RR 1.03、95% CI 0.54 ～ 1.97; I2 = 38%; 9 研究、1993 年の参加者)。
非ランダム化研究のデータは RCT データと一致しました。最も一般的に報告された有害事象は、喉/口の炎症、頭痛、咳、吐き気であり、これらは EC の使用を続けると消散する傾向がありました。他の結果や比較に関するデータを報告した研究はほとんどないため、これらの証拠は限られており、CI には臨床的に重大な害と利益が含まれることがよくあります。
著者の結論
ニコチンを含む EC は NRT と比較して禁煙率を増加させるという高い確実性の証拠があり、ニコチンを含まない EC と比較して禁煙率を増加させるという中程度の確実性の証拠があります。ニコチンECと通常のケア/無治療を比較した証拠も利点を示唆していますが、確実性は低くなります。効果の大きさを確認するには、さらなる研究が必要です。AE、SAE、およびその他の安全性マーカーに関するデータの大部分の信頼区間は広く、ニコチン EC と非ニコチン EC の間、またはニコチン EC と NRT の間でも AE に差はありませんでした。SAE の全体的な発生率は、すべての研究群で低かった。ニコチン EC による重大な害の証拠は検出されませんでしたが、追跡期間は最長 2 年で、研究数は少数でした。
RCT の数が少なく、多くの場合事象発生率が低いため、証拠ベースの主な限界は依然として不正確ですが、さらなる RCT が進行中です。レビューが意思決定者に最新の情報を提供し続けることを保証するために、このレビューは生きた体系的なレビューです。私たちは毎月検索を実行し、関連する新しい証拠が入手可能になるとレビューが更新されます。レビューの現在のステータスについては、Cochrane Database of Systematic Reviews を参照してください。
平易な言葉での要約
電子タバコは人々の禁煙に役立ちますか?また、この目的で使用すると望ましくない影響はありますか?
電子タバコとは何ですか?
電子タバコ (電子タバコ) は、通常ニコチンと香料を含む液体を加熱することで動作する手持ち式の装置です。電子タバコでは、煙ではなく蒸気としてニコチンを吸入できます。電子タバコはタバコを燃やさないため、従来のタバコを吸う人が病気を引き起こす可能性のあるレベルの化学物質にユーザーがさらされることがありません。
電子タバコの使用は一般的に「vaping」として知られています。多くの人がタバコをやめるために電子タバコを使用しています。このレビューでは主にニコチンを含む電子タバコに焦点を当てます。
このコクランレビューを行った理由
禁煙すると、肺がん、心臓発作、その他多くの病気のリスクが低下します。多くの人は喫煙をやめるのが難しいと感じています。私たちは、電子タバコの使用が人々の禁煙に役立つかどうか、またその目的で電子タバコを使用した人々が何らかの望ましくない影響を経験するかどうかを知りたかったのです。
私たちが何をしたのですか？
私たちは、人々の禁煙を助けるための電子タバコの使用を調査した研究を検索しました。
私たちは、人々が受ける治療法がランダムに決定されるランダム化比較試験を探しました。このタイプの研究では、通常、治療の効果について最も信頼できる証拠が得られます。また、全員が電子タバコ治療を受けた研究も探しました。
私たちは次のことを知りたいと思っていました。
· 少なくとも 6 か月間喫煙をやめた人の数。と
· 少なくとも 1 週間の使用後に報告された、望ましくない影響を受けた人の数。
検索日: 2022 年 7 月 1 日までに公開された証拠を含めました。
私たちが見つけたこと
喫煙した成人22,052人を含む78件の研究が見つかりました。研究では電子タバコを次のものと比較しました。
· パッチやガムなどのニコチン代替療法。
・バレニクリン（禁煙を助ける薬）。
· ニコチンを含まない電子タバコ。
· 他のタイプのニコチン含有電子タバコ (ポッドデバイス、新しいデバイスなど)。
· アドバイスやカウンセリングなどの行動サポート。また
· 禁煙に対するサポートはありません。
ほとんどの研究は米国 (34 件)、英国 (16 件)、イタリア (8 件) で行われました。
私たちのレビューの結果はどうなったでしょうか?
ニコチン補充療法（6件の研究、2378人）やニコチンを含まない電子タバコ（5件の研究、1447人）を使用するよりも、ニコチン入り電子タバコを使用した方が少なくとも6か月間喫煙をやめる可能性が高い。
ニコチン入り電子タバコは、サポートや行動サポートのみよりも多くの人が禁煙するのに役立つ可能性があります(7件の研究、3126人)。
禁煙のためにニコチン入り電子タバコを使用している100人当たり9～14人が禁煙に成功する可能性があるが、ニコチン代替療法を使用しているのは100人中6人、ニコチンなしの電子タバコを使用しているのは100人中7人、またはニコチンを含まない電子タバコを使用しているのは100人中4人である。サポートまたは行動サポートのみ。
ニコチン代替療法、サポートなし、または行動サポートのみと比較して、ニコチン電子タバコを使用すると発生する望ましくない影響の数に違いがあるかどうかは不明です。非深刻な望ましくない影響は、サポートなしまたは行動サポートのみと比較して、ニコチン電子タバコを摂取したグループでより一般的であるといういくつかの証拠がありました。ニコチン電子タバコとニコチン代替療法を比較した研究では、深刻な望ましくない影響を含む少数の望ましくない影響が報告されています。ニコチンを含む電子タバコを使用する人々と、ニコチンを含まない電子タバコを使用する人々に起こる、重大ではない望ましくない影響の数におそらく違いはありません。
ニコチン入り電子タバコで最も多く報告されている望ましくない影響は、喉や口の炎症、頭痛、咳、気分が悪さでした。これらの影響は、人々がニコチン入り電子タバコを使い続けるにつれて時間の経過とともに減少しました。
これらの結果はどの程度信頼できるのでしょうか?
私たちの結果は、ほとんどの結果についていくつかの研究に基づいていますが、一部の結果ではデータが大きく異なります。
私たちは、ニコチン補充療法よりもニコチン入り電子タバコの方がより多くの人の禁煙に役立つという証拠を発見しました。ニコチン入り電子タバコはおそらくニコチンを含まない電子タバコよりも多くの人が禁煙するのに役立ちますが、これを確認するにはさらに多くの研究が必要です。
ニコチン入り電子タバコと行動的サポートを比較した研究、またはサポートなしを比較した研究でも、ニコチン入り電子タバコを使用している人の方が禁煙率が高いことが示されていますが、研究デザインに問題があるため、あまり確実なデータは得られません。
より多くの証拠が利用可能になると、望ましくない影響に関する結果のほとんどが変わる可能性があります。
キーメッセージ
ニコチン入り電子タバコは、少なくとも 6 か月間は禁煙できます。ニコチン補充療法よりも効果があり、おそらくニコチンを含まない電子タバコよりも効果があることが証拠で示されています。
これらは、サポートがない場合や行動面のサポートのみよりも効果がある可能性があり、深刻な望ましくない影響を伴う可能性はありません。
しかし、より良いニコチン送達がより多くの人の禁煙に役立つ可能性があるため、特に古いタイプの電子タバコよりもニコチン送達が優れている新しいタイプの電子タバコの効果については、さらに多くの証拠が必要です。
投稿日時: 2022 年 11 月 23 日
